2009年6月21日日曜日

新幹線に食堂車があった頃

みなさま、実にお久しぶりです。
この間、拙ブログをのぞいてくださった方、さぼりっぱなしでごめんなさい。

ある事件についてえらく心がくたびれてしまい、気力喪失状態が続いておりました。どなたかがブログに、足利事件(菅谷さん冤罪事件)と同事件とのダブルスタンダードと題して、一面的な捉え方に警鐘を鳴らされていますが、同感です。限られた情報だけで「わかった」とすぐに判断して評価を下さないこと、「なぜ…」と一度疑ってみること、より慎重に多面的に事態を理解しようとする姿勢を保つことが、多元的社会ではいっそう大切ではないでしょうか。

さて、きょうは実に奇遇なことに、鳥取のIさんに大阪でばったり出会ったので(蕎麦屋さんにいたら、後ろから私を呼ぶ声が…。現職の先生の誰かかなと思いながら、ちょっと店を出て戻ったら、2年少し振りに会う御仁が座っておられました。ああ、びっくりした(^^;))。そんな日だったので、袖振れ合うも…と、昔話を思い出した次第です。

以前、新幹線には食堂車がありました。四半世紀近く前、大学院生だった頃、東京の神保町や早稲田界隈に出かけては古本を買っていましたが、東京からの帰り、新幹線の扉が開くやいなや、一番奥にあるふかふかクッションの席を陣取るべく一目散に食堂車に向かったのです。

テーブルのない座席では、揺れる車内ゆえノートをとることが難しく、ちょっと考え事をするには食堂車のテーブルが最適だったのです。それに広いし、車内販売の声に邪魔されることもないし。

とはいえ、食事はなしです。ご想像がつくように食堂車のメニューはどれも高くて…。オレンジジュース(たしか350円だったと思う)だけ頼んで、できるだけ長く粘ったものです。店からすれば、なかなかええ根性してますね。

そんなある時、すでに先客がいて目指した席はなかったので、4人用の席に座っていました。頼んだのはいつもと同じ、オレンジジュース。そこに「相席よろしいですか」とボーイさんの声。斜め前に壮年の男性が座りました。

男性は料理を頼んでビールを飲まれていたのですが、しばらくすると、なぜか前に座っている私に「どうですか」とグラスを勧められました。こういうお誘いにめっきり弱い私なので(要は飲むのが好きというだけですが…)、ありがとうございます、と頂いたのでした。

それがきっかけでした。どんな話から始まったか忘れましたが、えらく盛り上がってしまい、気分が良かったのでしょう、その男性は次々と料理を頼みはじめました。もちろん、ビールも次々とお代わりです。

内心、ひやー、すごいことになったなあと恐縮しながらも、こちらも実に楽しくおしゃべりしていました。茨城の工場で働いていること、息子さんが…云々と話が続きます。こう振り返れば、わたくし、人の話を聴く素養はあったのかしらん。

そうこう1時間半ほど過ぎたように思います。本当にたくさんいただきました。お酒も食べ物も…。そこで、ちょっとトイレにと失礼して戻ったところ、男性がいません。ボーイさんにたずねると、もう支払いを済ませて出たとのこと、びっくりしました。

割り勘払いとは考えていなかったものの、ちゃんとお礼も申し上げず、お別れも言えず…。悪かったなあと思いながら、残ったビールを飲み干しました。

歓談中に書いてもらった連絡先、今思えば、なぜ葉書の一枚も出さなかったのかと自分の幼さに呆れますが、当初はその地まで会いに行こうと思っていたのです。でもそんなことはすぐ実行するわけでもなく…。そして5年ほどが経ち、黄色くなったメモは捨ててしまいました。

今もお元気にお過ごしでしょうか。あの時はご馳走さまでした。そして楽しく過ごさせていただきました。ありがとうございます。

いつからでしたか、食堂車もなくなりました。
あそこでよい出会いを得たこと、本当に有り難いことでした。

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