2010年1月25日月曜日

中国でもディプロマ・ミル

中国で学術論文の代筆ビジネスの横行に関する調査結果がまとまったという。その“市場規模”は昨年、10億元(約130億円)。

論文は経済学から医学、法学など多方面にわたり、大学生の卒業論文は1本1000元(約1万3000円)。修士課程論文は3500元(約4万5500円)から、ホワイトカラーの月収にほぼ相当する5000元(約6万5000円)程度までの値段で販売されていたとのこと。昨年は、修士以上の学歴をもつ80人以上を雇って論文を代筆させ、論文を大量販売していた武漢市内の「論文会社」が摘発された。
2010年1月25日、読売新聞より)

アメリカでの学位製造工場(ディプロマ・ミル)については、小島茂『学位商法―ディプロマミルによる教育汚染』九天社、2007、があるが、学歴主義が機能している地域ではどこでも起こることなのだろう。

ただし、今回の報道は論文を売るというもので、学歴を売ることとはちょっと違う。後者は大学が「主犯」であり、問題の製造元なのだが、前者は、製造された論文を審査する大学が極めてちゃらんぽらんということになるからだ。

つまり、提出された論文を査読し、試問を経た後に学位が授与されるのであって(中国では違うのかしらん)、多くはゼミ生として知っている学生から出される論文だ。その学生が書いたものかどうかについて、問題の設定から先行研究の紹介、データの集め方から分析の手法やその解釈に至るまで、指導している教員がわからないということはあり得ない。そもそも論文はいきなり提出されるのではなく、少しずつ書かれていくもので、全体ができてからも何度も書き直すのが常だから、一度も経過を見ずに出されるのは不可能と言ってすらよいだろう。

仮に「飛び込み」で論文審査ということもありうるが(多くは博士論文だと思うが)、その場合でも試問をすれば、研究テーマが当人の問題となっているのか、どうやって作業を進めたのか、見抜けないことはない。つまり、今回の問題は、論文作成会社が存在するというだけでなく、学位を審査する大学そのものが学術的に怪しいということを示唆している。

学位論文は言うに及ばす、授業でのレポートですら、どこからか黙って引用していればすぐにわかる、それが普通の大学教員だと思うのだが。

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